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日本母乳哺育学会について

日本母乳哺育学会理事長あいさつ

日本母乳哺育学会理事長あいさつ

東京都立病院機構 東京都立荏原病院
救急診療科・小児科 部長 滝 元宏

このたび、令和8年9月より日本母乳哺育学会理事長に就任いたしました滝 元宏でございます。就任にあたり、会員の皆様にご挨拶申し上げます。
日本母乳哺育学会は、当時東京大学小児科学教授であった小林登先生が1986年に日本母乳哺育研究会として立ち上げられたのが第一歩でございます。小林登先生が本学会を設立した目的は、“母乳哺育を重視する医療者の中には、母乳哺育を狂信的に推進させようという動きもあって、基礎医学に基づいた、かつ、人間の営みとしての母乳哺育の在り方を広く探ること”ということです。40年の月日を経て、この間、日本の母乳育児に関する環境も非常に大きく変わり、いまだに多くの問題は解決されていないように思われます。
WHO/UNICEFが1989年に共同声明で出した『母乳育児成功のための10か条』が、2018年に『母乳育児がうまくいくための10のステップ』となり、1981年に世界保健総会で可決された『母乳育児代用品のマーケティングに関する国際規準』(以下,『国際規準』)の順守が更に重要視されました。それに伴い、日本でも母乳育児支援に目を向けられるようになり、日本の母乳育児率も徐々に上昇しておりました。しかしながら、2019年にCOVID-19のパンデミックを経験し、すべての母子にソーシャル・ディスタンスが適応され、妊娠中の産前クラス、分娩立会い、早期母子接触、入院中の面会、フォローアップ健診、退院後のサークルの開催は軒並み中止に追い込まれ、このような母乳育児支援不足が、母乳育児を阻害し、母乳育児の重要性に対する認識も希薄になり、母乳育児率も低下へ転じ、母乳育児支援者も無力感に苛まれているようにも見受けられます。
『国際規準』には、「すべての子どもたちと,すべての妊娠中または授乳中の女性には、健康になるために、あるいは健康を維持するために、適切な栄養をとる権利がある」と前文に書かれております。
本学会には、すべての乳幼児が適切な栄養を与えられること、すなわち、赤ちゃんを母乳で育てることのできる環境と、母乳で育てられない赤ちゃんの養育者にはさらなる支援が提供される環境を整え、母乳育児を保護・推進・支援してゆく責務がございます。同時に、母乳・授乳に関する基礎医学を研究し、その結果を母乳育児に活用し、今後の母乳哺育に役立つ知見を得ること、そして社会にひろめることで最終的に母親が望む母乳育児につながっていく・・そのような使命もございます。また、若い医療従事者が母乳育児支援に希望と魅力を感じ、安心して専門性を磨き続けられる環境を整備することも重要です。
これまで本学会の理事長の、小林登先生、牛島廣治先生、板橋家頭夫先生、水野克己先生の御意思を引継ぎ、こどもの健やかな成長発達を見守る立場から、我が国の母乳哺育を発展させていきたいと思います。学会運営におきましても、会員の皆様の声に耳を傾け、それぞれの立場から率直に議論できる学会でありたいと思います。一人でも多くの方に会員になっていただき、皆様と力をあわせて、こどもたちの未来に母乳哺育研究を通してかかわっていただきたいと存じます。
会員の皆様のご支援とご協力を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
令和8年9月吉日